僕とみつばち

諦めたような顔で言われたら、何と返していいか分からなくなる。



結局、僕たちはそのまま、しなだれこむようにホテルへと入っていった。



馬鹿な男だと思う。
しかし、しがみつくか細い腕に、泣き出しそうな濡れた瞳に、激情を掻き立てられたのは間違いない。



それからの僕たちは、それこそ逢う度に抱き合った。互いの肌が一つに溶け合うほどに。 



こんなに溺れたのは初めてで、幸せというよりは、どこか怖かった。



後ろ暗い関係だから、ということではない。



失うのが。



怖かった。



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