僕とみつばち


そう言えば、少し太ったか。
ワカコは元々細いから、少し肉が付くとすぐ分かるのだという。



『手首を握ったら分かるよ』



なんて、一流のジョッキーみたいな事を言っていたっけ。



「太ったとか?」
「うん。正解。」
「やっぱり?でも少しだけだろ。」



「うん、でもねそれだけじゃないんだけど。」



ワカコは大切な事を言うときは遠回しになるクセがある。



嫌な予感だ。



「聞かなきゃだめ?」
「できれば。」



汗がじわりと滲んでくる割に、腹の中はひんやりしている奇妙な感覚を覚える。



しかしワカコははっきりと、強く言った。



「赤ちゃんができた。」



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