彼 岸 花
真っ黒で少しワックスをつけている髪。泥?のような汚れが所々ついたグレーのスーツを身にまとっていた俺。
「・・・。」
俺はそのガラスに映った自分をジッと見つめていた。
ガラス向こうの客が変な目で俺を見ていたが、今はそんな恥など気にしてなどいなかった。
俺の名前・・・それすらもわからない。
どうして、ココに立っていて何故スーツを着ていたのかさえ知らない。
親も家の住所も仕事も全て・・・
わからない。