かっこう
コーラの缶を椅子に置いた後、ワンテンポ遅れてきいちゃんは走り出した。

猫は自販機の後ろに隠れていた。明るいキジ虎の、不機嫌そうな顔をした猫だった。

きいちゃんはその猫をごく自然に抱き上げると、耳の後ろを掻いてあげた。

「貴衣子さんって、真弓の話した通りの人だと思う」

まるで他に見る物がないかと思うくらい、それくらい、ユカはきいちゃんを見続けていた。

きいちゃんの仕種、髪質、表情、全てを目に焼き付けるかのような、ユカの眼。
こんなユカの表情は久しぶり、いや、初めてかもしれない。
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