かっこう
その写真は今も、赤いフォトフレームに入れて箪笥の上に置いてある。



「康子さん」

家の中で私はきいちゃんを探しているところだった。

風呂上がりに豆乳を飲んで以来、豆乳が好きになったきいちゃんのために「紅茶味」の豆乳を発見したので買ってきたのだった。

「まだ何も教えて下さらないんですね」

ただ事でない。
きいちゃんの声に私は障子を開くのを止めた。

康子、というのはママの名前だ。

「わかりました」

障子には、ママときいちゃんが向かい合うシルエットが映し出されている。

この家唯一の和室はママの寝室だ。
< 21 / 26 >

この作品をシェア

pagetop