かっこう
靴を履くときは左足から、とか、髪を切る日は雨の日、とか、きいちゃんは自分で作った「決まり」をとても大切にしている。

「仕事辞めたの?」

喉をごくごく鳴らしながら豆乳を飲むきいちゃんに、なんとなく私は尋ねてみた。

「まぁね、検討つくでしょ?」

きいちゃんは人事のように言って、ふん、と一息ついた。

その仕種に私は思わず笑ってしまう。

「なによ」
「いや」

私は笑いを堪えながら続けた。

「最近きいちゃんがいないからつまんないって思ってたの」
「なにそれ」

私たちは二人とも顔を見合わせて笑った。
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