ずっと傍に…
.



「沙知…」



歳さんの囁くような声音で私は目を覚ました。



「戻ってたんですね」



起き上がって歳さんを見る。


視線が絡まった。


慌てて瞳を逸らすと歳さんに抱き寄せられて、ぎゅっと抱き締められた。



「と、歳さん…!?」



心臓がやばい。


布越しに伝わる歳さんの体温が愛しく感じる。



「沙知…」



呼ばれて顔を上げると再度絡まる視線。



「……お前を……本当に許婚にしたい」



真っすぐな声。


迷いのない瞳。



「急に、どうしたんですか?」



いきなりすぎて混乱している自分がいる。


顔が熱い。



「俺がお前の家族になる。…お前の時代の家族には及ばないが……お前といたい」



“家族”…。


さっきの夢、現代の家族と一緒にいる夢だった。


きっと歳さんは私を哀れんでこんなことを言いだしたんだ。


……歳さん、優しさは時に残酷だよ。



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