ずっと傍に…
.



―――――――
―――――
―――



(歳さん…帰ってくるかな?)



屯所に戻った私は特にすることもなく部屋で寝転がっている。


畳の感触が気持ちいい。


でも障子の隙間から注ぐ夕日がなんだか切なく見える。



「今帰った」



静かに襖が開いて。



「歳さん…」



歳さんの背中に夕日がいて、なんだか胸を締め付けられる。



「もう…帰らないかと思ってました…」



私がそう言いいながら、身体を起き上がらせて正座の体勢をとる。



「………帰らないとお前は泣くだろ?俺にバレないように一人で」



歳さんはしゃがんでくれて。


視線が絡まる。


頬を大きな手で包まれて、鼓動が速くなる。



「ありがとうございます…っ」



歳さんが私のために帰ってきてくれたってことが嬉しい。



「……沙知」



歳さんの表情が歪む。



「わかってます。…ここを出るのでしょう?」



お願い私。


涙を流さないで。


泣いてしまったら、涙の分だけ歳さんを困らせてしまうことになるから。



.

< 22 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop