ずっと傍に…
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「さて、色々聞きたいことはあるが…まず名は?」



「沙知【さち】です…」



ちなみに現代では普通に女子高生でした。


と言うのは心の中で呟いた。



「沙知か…。それでなぜあのような身なりであそこにいたんだ?」



土方さんの問いに言葉が詰まる。


そんなの…私が知りたいよ。



「わかりません。…気が付いたらあそこにいたんです」



ふと、家族や友達の顔が浮かび上がる。


鼻の奥がつーんとなって溢れた涙で視界がぼやけてくる。



「泣くな。わかることだけで構わないから話せ」



土方さんは袖で涙を拭ってくれた。


乱暴に拭われて少し痛かったのは私の秘密だ。



「信じてもらえるかわからないけれど…」



話し始めるなり勢いよく襖が開けられた。



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