分校物語　～夏～
「先生・・・」
二人が教室を出た後、慎吾が清貴の前に近寄ってきた。

「どうしたんだ？　」
「先生・・・どうしても来週の水曜日、お母さんと会わなきゃ、ダメか？　」

「何か都合が悪いのか？　」
清貴が不思議そうに尋ねた。

「出来たら、月曜日にしてほしいんだ・・・」

「月曜日か・・・そうか、確か慎吾のお母さんは美容師だったな。店が休みだから、そっちのほうが都合がいいのか？　」

「うん・・・」
慎吾は小さく返事をしてうなずいた。

「わかった。それじゃ、担任の永岡先生に月曜日の放課後に都合がつくか相談しておくから、明日まで待ってくれないか？　」
「うん。わかった」

「ところで、最近、お母さんとメールで話しをしているのか？　」

慎吾は祖母と暮らしている。

母親は島を出て働いているため、普段は離れて暮らしている。

慎吾が母親と会うのは、母親の仕事が休みの日か学校が休みの日以外は、ほとんど会うことがない。
そのため、慎吾は自宅のパソコンで、母親とメールのやりとりをすることが母親と接する手段だった。

「最近、お母さん、仕事が忙しいみたいでメールの返事があまり返ってこないんだ」

慎吾は、寂しそうに答えて教室を出て行った。
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表紙・目次

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