レモン
「俺がもう少し気にかけてやっていれば良かったんだろうか・・・。」

「・・・。」


何も言えない。


「気づいた時にはもう・・・
どっぷりはまってしまっていてね。

母さんも愛海(お姉さん)も何度も話してたらしいんだが、
まったく相手にしてもらってなかったと言っていたよ。

俺も何度も怒鳴ったが顔も見てはくれなかった。
掴んだ腕を振りほどかれた時は思わず手を上げそうになってね・・・。」


俊司からなんとなく聞いていた。


「でも殴らなかったんですよね?」

「いや・・・殴れなかったんだよ。
あいつの目を見たら、
あいつは俺を恨んではなかったからね。」


この話も、お父さんの事も聞いた事がある。


「俊司は、ずっとお父さんの働く姿を見ていたんですよ!!
昼真っからバイクに乗って、いつも現場まで行っていたんですよ。」


思ったよりも驚いた顔をしなかった。


「あぁ、そうだったのか・・・。
だから大工になるって言い張っていたんだな。
俺は何も出来るわけがないって突き放してしまったよ。」


少し下を向いてしまったお父さんに囁いた。






「そのおかげで今の私達がいるんですけどね。」



今度は少し驚いてくれた・・・。

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