レモン
Dissonance.....
あの雨が降った夜、
2人は近くに住む後輩の家を訪ねた。
びしょ濡れで現れた2人をためらいもせず家に上げてくれた。
俊司を家に上げてくれる人なんて滅多にいない。
ましてやこんな夜中に突然だ。
それでも笑って迎え入れてくれるのはこの子くらいだろう。
しかも何だかとても嬉しそうに。
俊司は後輩と何か話しているみたいだったので、
先にシャワーを浴びる事にした。
出るとすぐに俊司が入って行った。
「小柄さんどっちが良い?」
突然可愛らしい声で聞いて来た。
「じゃあこっち貰うね。」
この子とは前から面識がある。
『健』と言って俊司に一番懐いているみたいだった。
俊司を叱ったあの動物園に行ったのも健だったし。
「久し振りに会えて嬉しいな。」
また可愛い事を言う・・・。
俊司にはないものに少しときめいてしまった。
「最近会わなかったもんね~。何か忙しかったの?」
健とは私が俊司と付き合うようになってから、
まったく会っていなかったのだ。
「あぁ・・・まぁ、そんな所です。」
何かはっきりしない返事だったけど、
聞いてはいけない気がして、深く聞くのを止めた。