レモン
いつものように1番後ろの右端に座った。
隣の少し離れた所に50歳くらいのおばさんが座り、
前の席には若いスーツ姿の男性が座っていた。
バスは走り出し、私は座ってからずっと外を見ていた。
あの角に近づくにつれ心臓がバクバク鳴るのを感じ、
深く呼吸をして落ち着かせようとしていた。
そしてとうとう例の角に差し掛かった・・・。
外を見ていた私は息を飲んだ。
「うわぁ~ひでぇ事故。」
前に座る男性が窓の外を見て言った。
「これじゃあ助からないわね。」
隣のおばさんが立ち上がり外を見て同情するように言った。
バスは大型トラックが横転する横を通り過ぎた。
トラックの陰になり現場全体は見えなかったが、
2人が言う通り悲惨な状況だと誰でも分かる事故現場だった。
夢の状況とまったく違っていた事に私は少し安心していた。
バスはそのまま次のバス停に向かっている・・・。