レモン
地下鉄が駅に着き、俊司を起こして電車を出た。
改札を通り外に出ると、すでにバスが着いていたので、
私達は急いで乗り込んだ・・・。
1番後ろの席にここでも隣に俊司が座る。
いつも1人で外の景色を見ていたけれど、
今日は窓とは逆の俊司の方を向いていた。
私達が乗ったそのバスは他に誰も乗せる事なく走り出した。
「俺が貸し切ってやった。」
そんな冗談を言いながら2人はバス停に着くまで笑い続けた。
その間にあの角も通り過ぎていたけれど、
私は外を見ていなかったので何も気づく事はなかった。
バス停に着いたので2人はそこで下りた。
そして俊司の家までの道を、
いつもよりゆっくりと歩いていった。
堤防沿いには草や花が咲いていて、
隣を流れる川は透き通り魚が泳ぐのが見えた。
その向こう側は駅があり栄えているが、
私達が歩く側は家や学校がある住宅街になっている。
夜が近づいていたので家々には電気が点きだし、
学校帰りの小学生達がいて賑やかだった。
途中ベビーカーを押した若い主婦とすれ違った時、
珍しく俊司が可愛いと言って振り返っていた。
「俺、女の子が欲しかったな・・・。
小柄に似た可愛い女の子が・・・。」
そう寂しそうに言っていた・・・。