レモン

健とお母さんがお茶を持って来たのを見て、
お父さんがテーブルの下から何かを取り出した。


「俊司のズボンに入っていたみたいなんだ。
たぶん小柄さんにだと思って・・・。」


そう言って小さな箱を私にそっと差し出した。


それは少し汚れてしまっていたが、
人目で指輪を入れていたケースだと分かった。

手に取ると小さいのに重みを感じ、
それには俊司の気持ちがしっかり込もっていた。

そっと蓋を開いて中を確認し、
私は開いた状態のままテーブルに戻した。

それを見た皆は一瞬、不思議そうな顔をした。


そこには何も入ってなく、
でもしっかりと指輪の跡が残っていたのだ。

そして私は自分の指から指輪を外し、
そっとケースの跡に合うように入れてみた。

ピッタリとそこに納まった指輪を見て皆は驚いた。


指輪はキラキラと輝いていた・・・。

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