レモン
第四章
Nightmare.....
「うわぁ~ひでぇ事故。」
「これじゃあ助からないわね。」
バスに乗っていた人達はまるで他人事だ。
私も同様、
同じように身を乗り出し興味だけで外を覗いた。
動くバスの小さな窓からの景色には、
大きなトラックに押しつぶされるように、
小さな一つのバイクが見えた・・・。
私はそれを見た瞬間固まった。
潰されているバイクに見覚えがあったのだ。
私の瞳にはしっかりと俊司のバイクが写っていた。
救急車やパトカー、野次馬が沢山居て、
本当に一瞬しか見えなかったのに・・・。
どうして見つけてしまうんだろう・・・。
私はパニックになっていた。
小さな声でずっと、
「・・・降ろして。・・・止めて。」
そう繰り返し呟いているのに、
隣に居たおばさんが気づいて声を掛けてくれていた。
でも私はそれにも反応しなかった。
何かに気づいたのか、
前に座っていたお兄さんが前に走り出した。
そして、運転手に事情を説明し後ろに戻ってきた。
お兄さんが戻るとバスはそこで急停車した。
私の手を取り一緒にバスから降りて、
お兄さんはまた戻りバスは居なくなった。
私は動揺していて御礼もしていなければ、
顔も何て言ってくれていたのかも覚えていない・・・。