レモン
規制されたテープを潜り私はトラックの側に居た。
周りはいつもと変わらないのに、
俊司のバイクだけがグチャグチャだった。
あとはトラックが倒れていて、
人が沢山見ているくらい。
何も変わらない、
いつもの曲がり角のはずだったのに・・・。
パトカーと救急車の赤いランプが目に焼きつく。
そして、道路に流れる大量の血の赤も・・・。
あれはきっと俊司の血だと思った。
隣に居たおばちゃん達が何か言っている、
警察の人や救急の人が話し掛けきている、
だけど私には良く聞こえない。
血を見て怖かったのか、
野次馬に来ていた子供の泣き声だけが耳に響く。
私だって声を出して泣きたかった。
けれど、何故だか泣く事が出来なかった。
私は現実を前にしても、
受け入れて泣く事さえも出来なかったのだ・・・。