レモン

救急車が行っちゃう。

だけど足が動かない。


だって中に乗っている人は、
私の知ってる人じゃない。

だって私の好きな人はそんな格好悪くない・・・。


私が動けないでいると、
救急車は大きな音をたてて出て行ってしまった。


救急車も出て、警察も居なくなった。

周りに居た野次馬も消えた。

だけど私はずっと同じ場所で立ち尽くしてた。

座り込む事さえできずにいた。


周りはすぐにいつもの静けさを取り戻し、
木や花の香りで包まれていた。

そこを行き交う人々はいつもの生活に戻り、
だた1人道路に立っている17歳の女の子を、
好奇の目で見ては通り過ぎて行く。


事故があった事を誰も知ることはないし、
さっきまで見ていた人たちも明日には忘れてしまう。

それは風化され、過去になって行く瞬間だった・・・。
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