レモン
真っ赤に染まった道路にしゃがみ込んだ私は、
そこに俊司を感じていた。
右手、左手とそこに置き、
顔を下げると涙が零れた・・・。
次々と出てくる涙を道路は吸い込んでいく。
私は次第に顔を上げ、声を出して叫んでいた。
信じたくない。
これは夢だ・・・。
そう思いたかった。
だから、そこを立ち私は走り出した。
後ろにあった道路に飛び出した時、
車のクラクションが大きな音をたてた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・。」
空にはまだ月が昇っている。
風はなく蒸し暑い初夏の夜。
外は虫の鳴き声がうるさくなってきた。
体からびっしょりと汗をかいて、
飛び起きた私はまた泣いていた・・・。
そっと小柄の部屋のドアが開くと、
そこには月明かりに照らされた健が立っていた。