レモン
その日2人で俊司の部屋を片付けた。
親に欲しい物は持って行って良いと言われ、
1人じゃ出来ないからと小柄は健を誘っていた。
俊司の親はこの家を出て行く事を決めていた。
ずいぶん前から話しがあったみたいだが、
俊司がまだ家に居た事から少し迷っていたみたいだ。
俊司の家族は1週間後、フランスに旅立つ。
お姉さんの家に永住する事になったのだ。
だから荷造りを兼ねて、
小柄に俊司の部屋を任したのだった。
「これは持って行きます?」
健がアルバムを手に小柄の方に見せた。
「アルバムはいらない。
近くにあると辛いから・・・。」
小柄が小さく言った。
元気のない小柄をみて健は小さく溜息をつく。
2人はテキパキと仕事をしていった。
夕方にはだいたいの荷持つが片付いていた。
「ねぇ・・・外食べに行きたい。」
小柄がやっと自分の欲求を口にして、
健は少し安心できた。
「どこでも好きな所行きますよ。」
小柄は少しずつ健の笑顔に癒されていった。