レモン

私達がまだ、友達だった頃の話・・・。



後輩の提案で無理やり動物園に連れて行った事があった。

それはそれは不機嫌だった・・・けど、
着くやいなや彼のはしゃぎっぷりには2人して唖然とした。

特にコアラの所では本当に他のお客さんに迷惑をかけてしまった。


その日はやけに人が多くて、背の高い彼でさえ見えない状態だった。



「ねぇ~パパ全然見えないょ~。」
「人が多いんだ我慢しなさい。」



家族連れが多くて、私は微笑ましい家族の姿に少し感動していた。

いつか俊司と子供と来ている姿を想像して、
笑いそうになったのを堪えていた時、
俊司はまったく違う事を起こしていた。



「だぁ~うるせぇなぁ!!泣くなら帰りやがれ!!」



泣き出してしまった子供に怒鳴っていたのだ。
そして、余計に泣かせている事にはまったく気づいていない。

一度切れた彼をなだめられるのは私しかいない。



「ごめん。気づかなくって。」



必死に止めにかかっていた後輩に声を掛けた。
そして、子供とお父さんに何度も謝って俊司をそこから連れ出した。



「何やってんの??」

あまりに大人気ない行動に思わず声を荒げて聞いた。

「俺、子供嫌いなんだよね。」

でた!!何度も聞いてきたこの言い訳にはさすがに切れてしまった。

「俺の事はどうでも良い!!
子供泣かしてなにがしたいのって聞いてんの!!」

初めて私に怒鳴られた為ビックリしている様だった。

「・・・・・ごめん。」

勝った!!初めて「ごめん。」って言わせたぁ~!!



私達のやり取りを黙って見ていた後輩は、
今でも大笑いしながら話している。



「あの俊司先輩のあんな姿プレミアもんだぜ!!」



「あれからもう二度と見れらなくなっちゃうんだもんなぁ~・・・・・」
< 8 / 106 >

この作品をシェア

pagetop