レモン

その年の夏は健と毎日一緒だった。

海やプール、祭りに花火・・・。

小柄の家族とキャンプに行ったりもした。


健が出たがらない小柄を、
色々な所へ連れ出したのだった。

小柄もしだいに笑顔を取り戻し、
健の事を信頼していった。


だが、俊司の事を忘れる日もなかった。

夜には必ず泣いていた。

それを健も知っていて、
それでも一生懸命、
小柄を元気付けようとしていたのだ。


そうしている間に、夏は過ぎて行った。


秋が来て学校が始まっても、
小柄は行こうとしなかった。

そしてついには退学届けをだしてしまった。

さすがの健も、
それはもうどうしようもなかった。


2人は同じバイト先に変わり、
本当に1日中一緒に居た・・・。


秋の終わりに、
小柄の親からプレゼントされ、
2人で旅行にも行った。

1泊2日の温泉旅行に。

その日から、
2人は本当に付き合うことになり、
健も敬語を使わなくなった。


2人にとって大きな一歩だった。

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