レモン

春になり、
小柄に昔の元気が戻ってきた。

今度は嘘じゃなく、
本当の笑顔も取り戻していた。

そして夢を見つけて、
通信制の高校に通いだした。


医者や弁護士なんて言わないけど、
それはきっと世界で一番美しい夢だと思った。


健はそれを聞いて応援していた。

もう本当に大丈夫なのかもと思っていた。

だがそれはほんの一時でしかなかった。


もうすぐ夏が始まる・・・。

俊司の命日がやってくるのだ。

今の2人にとって、
きっと1番怖いものなのだろう。


後ろめたさとか、
そんなもんじゃなくて、
小柄は嫌でもあの日の事を、
思い出さなくてはいけないのだ。


それが何よりも怖かった。


健にもどうにも出来ない・・・


小柄の1人っきりの戦いが始まるのだった。


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