レモン

前を行く小柄が角を曲がり、
健の視界から消えた時、
踏み切りの音が響いた。

そこでやっと健は気づいたのだった。

ここを行けば線路がある・・・
小柄はそこに行った・・・。


健は言う事を聞かない体を、
一生懸命動かして走った。

今にも倒れてしまいそうな、
そんな体で・・・。


健がそこで見たのは、
踏み切りの線路の真ん中に立つ小柄の姿だった。


「・・・っ小柄―!!」


健は枯れるくらい大きな声で叫んだ。

それに気がづいた小柄はこっちを向いたが、
そこから動こうとはしなかった。

電車がこっちに向かっていた・・・。


小柄はぎゅっと目を瞑った。


健はぎりぎりの所で中に入り、
小柄を連れて外に倒れ出た。


「何やってんだよ・・・。」


健が言うと小柄は、


「ごめんね・・・。」


そう言ってまた泣いていた。
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