レモン
Promise.....
俊司が亡くなってちょうど一年目。
小柄と健は喪服に着替えていた。
あの日から一度も行っていない、
俊司の地元に行こうとしていた。
だが、俊司の家族は帰って来なかった。
2人は準備を整え家を出た。
地下鉄に乗り込み、改札を出るまで、
2人の間に会話はなかったが、
健はずっと小柄の手を握っていた。
改札を出て、駅の階段を上っている時、
小柄の手が強く握り返したのが分かった。
心配になり健はちらっと横を見た。
顔色が悪く、小刻みに震えていた。
「小柄?大丈夫?」
健の声に立ち止まった。
「もう行けない。
怖くてここから近づけない。
ごめん・・・帰ろ・・・。」
小柄は健の手を強く握り、
階段をまた下がって行ってしまった。
小柄は俊司の地元に立つ事さえできなかった・・・。