レモン

帰りの電車ではもう震えも止まっていて、
顔色もだんだんと良くなっていった。

少し喋っていたら、
小柄が健の肩に頭を預けて寝てしまった。

隣で寝息を聞いていた健は、
ある事を思いついた。


小柄が寝ている間に降りる駅を過ぎていて、
健は別の駅で小柄を起こして降りた。

どこかも分からない町に降りた小柄は、
あちこちを見渡してきょろきょろしていた。


「ここ何処?」
「行けば分かるよ。」


健はそう言ってばかりで、
なかなか教えてくれなかった。

少し山道を歩くと、ある場所に出た。

そこにはプライベートビーチのような、
白い砂浜と、小さな青い海が広がっていた。

健の手を離して、小柄は海まで走って行った。


「今年、初めての海だぁ!!」


膝まで海に入った小柄は、
健の方を向き大声で嬉しそうに笑っていた。


「冷たくない?本当に海好きだよね。」


健も海に入って行った。

2人はしばらくの間、
全てを忘れてただはしゃいでいた・・・。

< 90 / 106 >

この作品をシェア

pagetop