レモン

それからまた季節は過ぎ。

小柄は何回か、俊司の地元の駅までは行ったが、
全部外に出られないまま終わった。

健はそのたびに付いていって、
一緒に帰って来た。

そんな事が繰り替えされる内に、
小柄の指から指輪は消え、
新しい指輪が光っていた。


それはきっと小柄なりのケジメであって、
何かの合図だったのだろう。

健はそれを読み取り、
一年後の夏、俊司の三回忌の日に、
再び行くことを決めていた。

それまでの間に、
小柄と健には思い出が増え、
絆もいっそう強くなっていった。

小柄は何かを決意したかのように、
健から自立していった。


離れて行ったわけじゃなく、
1人の女として歩いていた。


俊司が亡くなって二年目の夏がやってくる。
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