レモン

遊びすぎて気づいたらもう、夜だったな。

俺は真っ暗の海って怖くて、
今まで嫌いだったんだけど、
あの日小柄と見た海は、
月明かりが反射してすごく綺麗だった。

小柄のおかげで、
海がどんどん好きになるよ。


隣に座る小柄が、
黙って遠くを見ていたから、
きっと俊司さんを思い出しているんだと思った。

小柄の指には俊司さんが残した、
綺麗な指輪がずっとしてあった。

俺にあんな綺麗なプレゼントは、
一生出来ないと思ったね。


俺はずっと、
一番になれなくて良いと思ってたけど、
実際いつも側に居ると、


(いつかは・・・。)


ってバカみたいに期待しちゃうんだ。

小柄には忘れなくて良いって言ったけど、
1番忘れて欲しいと思ってたのは俺だった。

小柄をこの手で抱きしめた時、
俺は涙が出た。


(ここに居るのは俺なのに・・・。)


悔しくて泣いていた。

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