藍色レインデイ
なのに突然現れた人物によって優しい雨は遮られた。

「こんなに雨が降っているのに傘もささずに何しているんだい。
大体子どもはもうお家に帰る時間だろう。」

「あなた、誰。」

「おや、失礼しました。
僕はこの奥の大学に通っている兼元 愁っていうんだけどね。どうもお節介な性格でね。
君、家には帰らないの。」

「子ども扱いしないでよ。私もあなたと同じ大学の学生なんてすけど。」

そう言うと彼は目を見開いて驚いた。
背が低く、あまり認めたくないが童顔な私は年齢より下に見られることはよくあるが、ここまで子ども扱いされたのは初めてだ。

「へぇ、君何て名前?」

「………芹沢 茜。」

何となく答えるのは癪で少し間が開いた。しかもかなりの小声だったのでたぶん聞き取れないだろう。

「へぇ、茜か。可愛い名前だね。」

どうやらしっかり聞こえていたらしい。ああなんて地獄耳。

でも何だか嫌いだとは思わない。これもきっと雨が降っているから。今が私の大好きな梅雨だから。
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