藍色レインデイ


「僕は雨は嫌いだ。
大切なものを全部僕から奪いさっていくから。」

「…ぇ。」

予想外の言葉に思わず振り返る。
すると彼は私に傘を傾けていて、自分は雨に濡れていた。

その姿にドキリと私の鼓動が高鳴って、胸の奥がきゅーっとなって、目頭が熱くなった。
それは私が今まで生きてきて、一度も味わったことのない甘さを孕んでいて思わずクラリと目眩がする。


そういえば今までみんな曖昧な変人か適当な返事ばかりで、はっきり否定されたのは初めてだ。
なんて頭の隅で考えても、初めての感覚に脳ミソはフル回転で正直それどころではないのだけれど。

「あ、ごめん気を悪くしたかな。
でも僕には本当にそう感じられて仕方がないから。」

彼は済まなさそうに笑った。その顔に更に目頭が熱くなった。

「あなたは何か雨に嫌な思い出があるの?」

「うん。そうだよ。」

即答されて、逆に私の方が驚いてしまう。普通こんなに即答出来るものなのかしら。
そしてここは過去を聞いてもいいってことなのかしら。でもさすがに初対面の人に聞かれても、いやでもこの話し方は聞いて欲しいということなのかしら。
この人はよくわからないわ。

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