藍色レインデイ
彼は何も言わなくて、気まずい雰囲気が漂う。
私はどうしていいかわからなくて、目線が怪しげに泳ぐ。チラリと彼を見ても気まずそうにしている。
ていうか、そんなに聞かれたくないなら、聞きたくなるようなことを二回も言わないでほしい。
こっちだって迷惑だわ。
「…昔ね、母と妹が雨の日に車のスリップ事故で死んじゃったんだ。
それ以来どうも雨を嫌ってしまうんだ。」
「お母さんと妹さんは雨が嫌いだったの?」
また余計なことを聞いてしまった。
ああ私の馬鹿。
ここは普通そんな悲しいことがあったのね、って悲しんでいる顔を見せるところなのに。
何時もは無難にこなせるのに。
ポタリと手の甲に落ちた水滴が髪から流れ落ちたものではないことが信じられなくて、これは何って真剣に思った。
彼がずっと先を見ていて、気付いてないうちに止めなくちゃと上を向いても全く止め方がわからなくて。ほんとにどうしたの私。
「……そうえば、母も妹も雨が大好きだった。あの日も雨を喜んで出掛けていったんだ。」
何か大切な宝物を見つけたような顔で彼が振り返った。
まだ私の波は止まってないのに、振り向かないでよ。
ああもう。
「じゃあいいんじゃない。」
私はおもいっきり、なきながらわらってやった。