セピア
高校生のあの頃から8年も繰り返されてきたループ。
ギケン、ギケン・・・。
「ギケン・・・」
“まもなく新大阪につきます。のぞみ22号東京行き─”
はたと車内アナウンスに気付いて窓の外を見つめた。
ごうごうと唸りながら走る新幹線からは田園風景が流れていっていた。
こんなにもとおり過ぎてしまった。あの人のいる街を。
あの人が好きな人と暮らす広島は遥か遠くに過ぎ去ってしまっていた。
私はまた読みかけの小説に目を戻した。
誰にもわからない自分だけの、小さな小さなため息をついて。