すきだよ。


部活やってる人たちに気付かれないように、こっそり階段を上る。


3階の一番すみにある生物準備室からは、微かにキラキラ星の音が漏れていた。

ここらへんは誰もよりつかないし、さぼったり隠れたりするのに絶好の場所だ。



私は音が出ないようにゆっくりと扉をあけ、中に滑り込んだ。

キラキラ星は続いてるから、多分気付かれてない。


私は埃っぽい棚の影からそっと中を覗いた。
正しくは、覗こうとした。


「ぎゃっ!」


色気ゼロの悲鳴をあげ、私は棚の影からでた。


だってさ、カエルのホルマリン漬けが目の前にあったら誰だってびびるでしょ。


「誰?」


ヴァイオリンの人には気付かれたし。最悪。


「すいません…」


でもこの際、堂々と顔みちゃお!


軽い気持ちで顔をあげた次の瞬間、私は言葉をなくした。


整った目鼻立ち、ワックスで軽く遊ばせている黒髪、顎はすっとしていて…かなりかっこいい。


「あ、君…」


優しくて低い声。






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