ミュージック・ラブ3〜愛を奏でるメイフラワー〜
『父さん…これ覚えてますか?』

リョータはそう言いながら、一枚のピックをポケットから取り出した。

『お前まだ…』

シュンはピックを見て驚いた。

『僕がショッピングモールで迷子になって…そしたらあなたに出会って…あの日あなたがくれたこのピックが、ずっとずっと僕のお守りでした…』

リョータはそう言って、ピックを握りしめた。

『リョータ…悪かったな。お前に父親らしいこと、何もしてやれなくて…この手で抱きしめてやる事すらも出来なかって…』

シュンはリョータに軽く頭を下げた。

『ううん。あなたは僕に“生き方”を教えてくれました。自分のやりたいことに素直に向き合う“生き方”を教えてくれました。だから僕は、こうして今ミュージシャンって夢を叶える事ができたんですから』

リョータはそう言って優しく笑いかけた。

『ふふ、何か…すっかり大人になったなリョータ』

シュンもそう言って優しく笑った。

『はい』

リョータは笑いながらうなづいた。

シュンとリョータ…二人にとって初めての親子水入らずの時間を過ごしたのだった。

季節の変わり行く秋の始まりの夜の事だった。


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