ミュージック・ラブ3〜愛を奏でるメイフラワー〜
『ねぇ…覚えてる?』

楓は突然尋ねた。

『何を?』

敬大は不思議そうな表情を見せた。

『この場所…10年前にも一度来たよね』

『えっ?そうだったかな?』

敬大は記憶を辿った。

『うん、あたしがママとケンカして家を飛び出して…そしたら知らないうちにこんな所に来てて、帰り道もわからなくなって一人この木の下で泣いてたんだよね』

『そういえば…そんなことあったな…。楓がいなくなって、楓の親やお巡りさんや近所の人が必死で捜し回ってた』

敬大は思い出した。

『一人で知らないこの場所で…。でもあたしは、泣いてたけど不安はなかったんだ』

『えっ?』

『だってきっと…きっと敬大があたしを見つけてくれるってあたしは信じてたから』

楓はそう言ってあの日を懐かしそうに見ていた。

『そしたら本当に敬大があたしを見つけてくれたよね』

楓はそう言って笑いかけた。

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