ミュージック・ラブ3〜愛を奏でるメイフラワー〜
コップは床に落ちて割れた。

『敬大…』

レミは悲しげな表情を見せ、涙を零しながら病室を出て行った。

『くそっ!!』

敬大は悔しさと悲しみと、そして軽くレミにあたってしまったもぞかしさで苛立ち、枕を病室のドアに投げ付けた。

そして敬大は動かない左手の指を机に何度も叩きつけた。

するとそこで楓が病室に入って来た。

『敬大!!』

楓は机に左手を叩きつけている敬大を見て驚いた。

『くそっ!!こんな手!!』

敬大は唇を噛み締めながら左手を叩きつけていた。

『敬大!!』

そんな姿を見た楓は敬大に駆け寄り、叩きつけている敬大の左手を抑えた。

『楓…俺…俺…ギターが…指が…』

敬大は涙を零した。

そんな敬大の気持ちを人一倍感じている楓は、ただ敬大の動かない指にそっと手を当てていた。

『もう俺は…』

敬大の声は震えていた。

< 243 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop