記憶の破片
.



「お待たせしました」



お盆には二人分の緑茶と、二個の大福。


私たちはそれを食べながら他愛もない話をした。


少しして話が一度、途切れたとき、沙知さんが言いづらそうに話し出す。



「さっきは元気そうでしたけど、普段、沖田さんはどうですか?」



普段…。



「調子がいいとすぐに刀を構えたりしてます」



そう伝えると、沙知さんはくすくすと笑いだした。


その綺麗な横顔はやっぱりお母さんを連想させて、私は勝手にドキドキしていた。



「そう。あのね、私の得意教科って日本史なの」



綺麗な笑顔が少しずつ曇っていく。


でも理由がよくわからかい。



「特に好きなのは幕末、新選組。だから割りと西暦とか把握してるんだけどね…」



そこで沙知さんは言葉を切る。


いい予感はもちろんしない。



「…沖田さんに惹かれているなら、できるだけ傍にいた方がいいわ」



その言葉を理解するのに時間はかからなかった。


私は沙知さんにろくな挨拶もせずに走り出した。



.
< 19 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop