記憶の破片
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納得がいかなくて、私は沖田さんに詰め寄る。



「僕は近藤先生に一生付いていくと誓ったんです」



キッバリと言い切る、迷いのない凛とした声に私は何も言えなくなる。


でも私だってそんな軽い気持ちで伝えようと思ったんじゃない。



「私がそれでも構わないと言ってもだめですか?」



諦め悪いな。


自分でもそう思った。


きっと沖田さんもそう思ってる。



「……僕はもう、いなくなる人間です」



私に対する困ったような表情から、一気に儚い表情に変わる。


他の誰でもなく沖田さんは自分の病状を自覚していたみたいだった。



「…でも、私は」



「それ以上は言っちゃだめですよ」



やんわりと沖田さんに制止させられてしまった。


私は溢れ出す気持ちを伝えたいのに。



「なんでですか?」



少しムッとくる。


沖田さんはそんなに私の気持ちが迷惑なのかな?



「僕じゃ、綾さんを幸せにはできないからです」



微笑んだその哀しげな表情が儚すぎて。


泣きそうになったと同時に、カチンときた。



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