記憶の破片
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「…わかりました。じゃあ約束をしましょう」



とうとう沖田さんが折れた。


時間で言えば一時間くらいは押し問答をしていた気がする。



「約束?」



沖田さんは頷いて、私の髪を優しく撫でる。


表情は儚さが残ってはいるけどさっきよりも穏やかな表情だ。



「もし、生まれ変わって、また逢えたら…」



「なんで今じゃなくて、生まれ変わったらなんですか?」



沖田さんの手が髪から頬に移る。


その動作にもドキドキしてしまう。



「僕の体は僕が一番知ってますから」



そう口にできる沖田さんの心の強さに涙が溢れた。


それと同時にやっぱり私はこの人が大好きなんだと実感した。


沖田さんは流れた涙を拭いながら優しく微笑む。



「…っ私捜しますから、沖田さんの姿も、声も、名前も…全部違ってても、絶対見つけますっ」



頬に置かれた沖田さんの手に自分の手をそっと重ねた。



「…待ってますよ」



初めて、沖田さんが対等に接してくれた気がした。


それからいつものように一緒に眠った。


沖田さんの腕に包まれながら。


でも目を覚ますと沖田さんの姿はなくて、心配そうなお母さんとお父さんがいた。



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