記憶の破片

一途に…

.



私が現代に戻ってから数日が経った。


お母さんから聞いた話だと、学校の階段から落ちた私は意識不明のまま病院に運ばれたらしい。


そして約一ヶ月の間、眠ったままだったそうだ。



「よかったわ。どこも悪いところがなくて」



目が覚めた私はこれでもかってくらいに細かく検査をされて。


今日、やっと退院することができた。


隣で嬉しそうに微笑むお母さんを見ると、やっぱり心配かけちゃったんだな、と後ろめたいような気持ちになった。



「お父さんも今日は早く帰ってくるって言ってたわよ」



病院から自宅までのタクシーの中。


お母さんがふふっと笑った。



「心配かけて、ごめんね…」



最初に目が覚めたとき、お母さんにもお父さんにもクマができていた。


それに痩せてしまっていた。


それを思うと謝らずにはいられなかった。



「いいのよ。無事だったんだから」



微かに瞳が潤んだお母さんが目を細めながら私の手を握った。



.
< 24 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop