記憶の破片
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ふとお父さんが少しだけ表情を和らげた。



「退院おめでとう」



そう言ったポンと箱を渡された。



「これっ」



箱を見ただけでテンションが上がる。


私が小さい頃から大好きなケーキ屋さんの箱。



「よかったわね、沙江」



お母さんはお父さんの湯呑みにお茶を注いでいた。


ちなみにかなりの渋茶。



「うんっ。ありがとうございます、お父さん」



箱を抱えてお礼を言うと頭を撫でられた。



「疲れたでしょ?夕飯まで時間あるから部屋で休んだら?」



言われてからなんとなくカラダがだるいことに気が付いた。


ちょっと調子に乗りすぎたみたい。



「うん。少し部屋で寝てくる」



ケーキを冷蔵庫にしまってから、私は部屋に戻った。



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