記憶の破片
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ベンチに座った沖田さんははぁとため息を洩らした。


少し距離は置かれてしまってるけど、隣に座ってくれたことが嬉しい。



「…なんで、とっとと帰らなかったんだ?」



「え?」



「普通、帰るだろ。こんなに時間過ぎてんだから」



そう言われても、私はなぜか帰ることなんて考えつかなかった。


普通は帰るかもしれないけど。



「…普通じゃないのかもしれないです」



こうして沖田さんに会えたのだから、普通じゃなくてもまったく困らない。



「…変なヤツ」



ふっと笑った沖田さんは初めて見る笑顔で。


なんだか嬉しくて。


私まで笑顔になれた。



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