記憶の破片
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「お名前教えてもらっていいですか?」



沙知さんににっこり微笑まれて。


女の私でもなぜかドキドキ。


それと同時になぜか本当の名前は言っちゃいけない気がした。



「…綾【あや】といいます」



咄嗟に出てきた名前だった。


綾なんて友達にも親戚にもいない名前だし。



「綾さんですね。私は沙知といいます」



改めて挨拶をされて。


これはただの偶然なんだろうかと思った。



「食欲、ありますか?お粥作ったんですが…」



小さな土鍋の蓋をお母さん…じゃなくて沙知さんが開けると白い湯気があがって。


おいしそうな匂いが鼻腔を擽る。



「食べたいですっ。…あ、そうだ着物って……その誰が…」



レンゲでお粥を掬って口に運ぶ。


う~おいしいぃ。



「失礼かとは思ったんですが、私が着替えさせていただきました。ここ、私以外みんな男性なんですよ」



沙知さんの説明をお粥を食べながら黙って聞いた。


お粥なんて味気もないはずなのにこんなにおいしく感じるくらいお腹が空いてたのかな。



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