記憶の破片
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少しの間流れた沈黙を破ったのは総さんだった。



「じゃあ…」



え。


もう帰っちゃうの?



「やだっ」



思わず総さんの服の裾を握り締めた。



「は?」



総さんが首を傾げて目をパチパチさせてる。



「まだ帰っちゃダメですっ」



なんとか総さんを引き止めたくて。


必死で。


なのに頭上から聞こえてきたのはククッという笑いをかみ締める声。



「…総、さん?」



「じゃあ、のあと帰るって言うと思ったのか?」



まだ笑いを堪えてるような表情の総さんにコクンと首を縦に振った。



「…さすがにそこまで薄情じゃない。昼飯、食い行くか?」



「っはい」



嘘みたい。


総さんからご飯に誘ってもらえるなんて。



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