記憶の破片
.



え…。


それじゃぁ…。



「私も少し前にタイムスリップして、この時代に来たの」



まさか、タイムスリップした人が他にいるなんて思えなかった。


自分がタイムスリップしたことさえまだ認めたくないのに。



「もう一つ、ここが江戸時代末期だということは話しましたよね?」



私は黙って頷く。



「私たちが今いる場所は、新選組の屯所の中です」



「しん、せんぐ…み」



聞いたことはある。


家の本棚にはやたらと新選組関係の本があるし。


歴史番組とかでとり上げられるときはほぼ絶対見ている。


呆然とそんなことを思っていると、廊下の床が軋む音がして襖がいきなり開いた。



「沙知、少しいいか?」



……お父さん!?


いやでも、お父さんはこんな長髪じゃないし。


でも、顔立ちとか雰囲気がすごく似てる。



「歳さん、いきなり開けちゃダメですよ」



そう不満を言う沙知さんをお父さんに似た歳さんと呼ばれた人が優しい眼差しで見つめる。



「あ、こちらは副長の土方歳三【ひじかたとしぞう】さんです」



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