記憶の破片

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「違うなら、あれは俺に向けてだったのか？」



その言葉にも私はなにも言えなかった。


肯定をするつもりはないけど、自分でもわからなくて、なにも言えなかった。



「俺は、代わりになってやれるほど心は広くない」



低く、冷めた声。



「いくらお前が約束をしたと言っても、俺は知らない。…約束をしたのはあくまで俺じゃない」



拭うこともできない涙がポタポタと頬を伝う。



「…総さ、ん」



「帰れ」



ふるふる首を振ると、チッという舌打ちが聞こえた。


総さん、怒ってる。



「総さん」



「帰れ」



一度目よりも鋭くなった声に首を振ることはできなかった。


バッグを持って、涙をゴシゴシと拭って、ゆっくりと立ち上がる。



「総さん、ごめんなさい」



玄関に向かって、外に出ても涙を止められなくて。


総さんの傷ついた表情が頭から離れなかった。


総さんを傷つけたのは私。


総さんを、沖田さんを、ふたりとも傷つけた。



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