記憶の破片

気持ち

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とぼとぼと歩いていると、ポンと肩に手を置かれた。



「沙江ちゃん」




一度家に帰ったのかジーンズとポロシャツというラフな格好になった大和さんがいつものように笑みを浮かべ、私の後ろに立っていた。



「や、まと、さん」



「うん。家においで」



よしよしと頭を撫でられて、また涙が溢れた。


何度も行ったことのある大和さんのお家はマンションの5階。


行きも帰りも頭がいろいろいっぱいで気づかなかったけど、大和さんのマンションと近かったんだと今更気づいた。



「深雪がね、珠子を連れて実家帰ってるから俺ちょうど寂しかったんだよね」




わざと茶化したように言う大和さんの優しさに少しだけ笑うことができた。



「…喧嘩、したんですか?」



よくドラマとかである『実家に帰らせていただきます』みたいな想像をした私に大和さんは笑った。



「はは、違う違う。深雪のお母さんがぎっくり腰で動けないらしくてね。深雪は一人娘だから家のこと手伝いに行ったんだよ」



マンションのエレベーターに乗り、大和さんが5階を押した。



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