記憶の破片
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部屋につくと、リビングに通されてソファーに座ってるよう言われた。



「はい」



ことんと置かれたのはマグカップに入ったココア。



「ありがとうございます」



夏なのに、ホットココアを口に含むとほっとできた。



「沙江ちゃん、これから話すのは俺の勝手なひとり言だから適当に聞き流してね」



お父さんと同じように緑茶を一口飲んだ大和さんがそう言って話し始めた。



「俺はね、幼稚園に上がるころには近藤勇としての記憶があったんだ。もちろん最初から全部じゃないし、今も全部があるわけじゃない。でも年を重ねるごとに、断片的にその記憶は破片がくっつくみたいに繋がっていった」



やっぱり大和さんは近藤さんだったんだ。



「隼人は俺とは少し違っていて、沙知ちゃんが沙江ちゃんを生んだ頃に急に戻ったと言ってたよ。けど、土方歳三の記憶を持たない隼人と大学で出会って、コイツは一生ものの友達になれるって直感で思った」



私の知らないお父さんとお母さんの歴史。


お父さんにも土方さんの記憶があるんだ…。



「隼人と沙知ちゃんは前世、時、そういうものをすべて越えて今を一緒に生きてる」



ほんの少し大和さんが辛そうに顔を歪めた。



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