記憶の破片
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大和さんは優しいからきっとこんな短い時間じゃ言い尽くせないくらいいろいろあったのかもしれない。


こんなこと深雪ちゃんには言えないけど、きっと彼女を大和さんはちゃんと好きだったと思う。



「大和さん」



「ん?」



「彼女さんのことは、嫌いになっちゃったの…?」



そう尋ねた私に大和さんはとても優しい表情で首を横に振った。



「いや、歩む道が違うだけで嫌いになったわけじゃない。彼女には幸せでいて欲しいと今も思ってる。もう会うことはないだろうけどそれはこれからも変わらないよ」



「そっか…」



もう冷めてしまったであろう緑茶をゴクリを飲むと、大和さんはふと真剣な眼差しで私を見た。



「沙江ちゃん、詳しくはわからないけど、彼は今を彼として生きてるわけで、あくまで総司じゃないんだよ」



「…はい」



しゅんとうな垂れる私の頭にお父さんよりもゴツゴツした大きな手が乗る。



「大丈夫。沙江ちゃんはちゃんと自分で答えを見つけられるから」



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