記憶の破片
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「総司が拾ってきたというのはこの娘か?」



土方さんが沙知さんに尋ねながら私を見てくる。


明らかに不審がってる。


わからなくもないけど。



「歳さん、私に用があったんでしょう?部屋に行きましょう?」



射抜くようなような視線に耐えきれなくて身を縮めていると沙知さんが助け船を出してくれた。



「……あぁ」



渋々といった様子で土方さんは沙知さんと部屋から出て行った。


一人きりになると頭の中が不安で埋まってくる。


ここにはお母さんたちに似てる人はいるけど、お母さんたちはいない。


私一人でなんとかしなくちゃ。



「気分はどうです?」



いきなり視界に入ってきたのは目が覚めたときにいたカッコいい侍さん。


私をにこにこして見ながら腰を傍におろす。



「土方さんは話が長すぎて困りますよねー」



そんなこと言われても私は頷いたらいいのかどうかわからない。



「…あの、気分は悪く、ないです」



少しビクビクしながら言うとよしよしと頭を撫でられた。


まるで子供扱い。



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